Column / 大神の代表者コラム

役員報酬の考え方

役員報酬をどのように決めていますか?

 

tax accoutning

 

 社長の役員報酬は、一部の例外を除いて、社長自身で決めます。度を越えた金額でなければ、税法上、役員報酬を自由に設定して問題ありません。

 

 ですが、自由だからこその難しさがあることをご存知ですか?

 

 

役員報酬を決める際の注意点


 

 そもそも、世間の経営者は、どのように役員報酬を決めているのでしょうか。

 

 私の経験則では、中小企業経営者の9割以上は社長自身で決めているようです。自分の会社だから当然と思うかもしれませんが、役員報酬は高額になる傾向があるため、注意が必要なのです。

 

 

 まず一番分かり易いのは『税金』です。下記、個人の所得税率表をご覧ください。

 

 

tax

 

 

 所時税だけではなく住民税が10%や社会保険などが加わるため、役員報酬を年間4000万円以上に設定した場合、手元には半分以下の現金しか残りません。これは一年のうち6か月以上は税金のために働いていることと同じといえます。

 

 個人の税率は増加傾向にあり、 高額所得者としては痛税感が増しています。ところが、その一方で法人税は減少傾向にあり、実効税率は10年前は約42%だったものが、現在は約30%となっています。

 

 よって、オーナー社長は、低い税率の会社と合算して役員報酬を決めることで手元に多くのお金を残す事が重要となります。

 

 

役員報酬を決める際に持つべき視点


 

 

tax accouting

 

 個人の給与所得は700万円を越え出すと税金などの影響が大きくなり手元に残るお金が減るため、旨味が減少します。つまり、会社のお金が役員報酬になった途端に、税金になって消え始めるのです。

 

 そこで『節税』として、個人で負担していたモノを会社にカバーしてもらうことで、会社の税金を減らしつつ個人の手元資金を増やす工夫が施されるのですが、これにも限界があります。 限界を越えた節税は、黒に近いグレーであり、税務調査で大きな脅威となります。また、行き過ぎた節税は会社のお金を失うため、将来、資金繰りに悩まされるリスクがあることも忘れてはいけません

 

 では、そのようなリスクを避けつつ、個人にお金を残す方法として考えられる”一つの策”が『退職金』です。退職金は未来の話になる為、あまりピンと来ないかもしれませんが、必ず引退する日はやってきます。役員報酬として高額な税金を支払いながら現金を受け取るのではなく、『退職金』として将来にガッツリと受け取る!という選択肢です。

 

 

 退職金は、税金面で優遇されており、役職年数が高いほど効果は大きいのが特徴です。なお、退職金の金額は自由に決められるわけではありませんが、社長・会長であれば高額な金額の設定が可能です。その算出方法は…

 

 

役員退職金支給額=最終報酬月額×在任年数×功績倍率(+功労加算)

 

 

 功績倍率は、社長・会長だと『3倍』というのが相場です。しかし、業種や会社規模、時勢などにより基準は異なります。退職金は大きな金額が会社・個人で動くため、税務調査の対象になると考えたほうが確実なことから、十分な退職金を受け取りたいと考えるのなら頼れる税理士を味方に付けることは不可欠です。

 

 

 とはいえ、退職金まで待てない!という本音もあると思います。年商何十億円もあれば、億を超える役員報酬を取っても良いと思いますが、中小企業の半分以上が『年商1億円以下』です。それを踏まえれば、大胆な役員報酬を設定するよりも長期的な視点を持って退職金を準備したほうがトータルで手元に残るお金は増えることをご理解ください。

 

 

さいごに


 

 高額になりがちな役員報酬は、税金とセットで考えなければ損をすると思って間違いありません。ですから、経営者は顧問税理士の知恵を借り、役員報酬を決定する!というのが、世間一般的なイメージです。

 

 しかし、私がお会いしてきた9割以上の経営者は、税理士から提案を受けられず、自身で決めていました。相談はしていたようですが、私が得た内容は、疑問符が浮かぶものばかりだったのです。中には会社・社長を危険にさらすような回答をしていたケースもありました。

 

 なぜ、税金の専門家である税理士が、会社・経営者にとって最善策を提案できないのか。その答えは、また次回のコラムで…

 

 

【余談】退職金の準備方法


 

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  退職金の準備方法として最もメジャーなのは『生命保険』です。保険料の全額または一部が『節税』となる上に、『解約返礼金』として退職金を受け取る仕組みです。

 

 退職金の準備をしながら節税が出来る。経営者にとって、とても魅力的な方法です。しかし、現在は『全額損金』となる保険商品は少なくないため、保険料を支払っても税金は減らないのに現金を失いやすいのです。

 

 また、生命保険は毎年、高額な保険料を支払う必要があることも忘れてはいけません。ずっと好業績が続けば良いのですが、コロナ禍のように不測の事態は往々にして発生します。業績が悪化し、保険料を支払えないために解約した場合、戻ってくるお金が10%前後であることも珍しくないのです。

 

 誤解して欲しくないのですが、私は起業前に、生命保険を用いた節税提案をしていた身であるため、生命保険の活用は賛成の立場です。ただし、どんな保険商品に入るのか。保険料を支払えなくなった場合のリスクヘッジまで行えていないのなら、『保障目的』に限定すべきでしょう。

 

 

 

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