役員報酬の考え方で会社の未来は変わる
役員報酬は社長と会社で意味が違う
今回も引き続き、役員報酬を題材にしています。 前回のコラムでは、会社と個人の税率をうまく使えば手元にお金を多く残せると記しました。それと同時に、税金の専門家である税理士に役員報酬の相談をした場合、会社・個人を窮地に陥らせる可能性がることに言及しています
そこで今回のコラムでは、なぜ税理士に役員報酬の設定を相談すると、会社・個人を窮地に陥らせる可能性があるのか?について書いてきます。
役員報酬は会社にとって〇〇である
会社・個人の税率の違いを考慮し、最適な金額で役員報酬の落としどころを見つけるのなら、税理士の専売特許です(現実は、税理士より能力に個人差があります)。しかし、一般的な税理士の多くは”ある視点”が欠落しています。
それは役員報酬が、社長にとって収入である反面、会社にとっては経費であることのです。
もちろん税理士も帳簿上の意味では理解しています。しかし、メーターだけ見て車を運転できないように、帳簿だけを見て経営することはできません。つまり設定した役員報酬が、経営にどのような影響を与えるかを考慮しなければならないのです。
そこで質問です。あなたは、以下2つの内どちらを選びますか?
① 役員報酬は2000万円。しかし事業存続の可能性は10%
② 役員報酬は1000万円。しかし事業存続の可能性は90%
ベンチャー気質旺盛な経営者なら①を選ぶかもしれませんが、大半の方は②を選んだのではないでしょうか。
もちろん、現実では上記のような分かり易い選択肢が提示されることはありません。しかし、理屈として、役員報酬を多く出すという事は、会社の現金がその分、失われることを意味します。そして、会社の現金が失われるということは、急激に売上が下がった時に会社の体力が持たずに倒産するリスクが高のくなるのです。
税理士の良し悪しの見分け方
この手の話をすると一部の税理士や経営者からは、「会社が窮地に陥れば、社長が補てんするからカバーできる」と反論が出てきます。会社と社長は一心同体ですから、会社が窮地に陥れば、社長自身の財産を差し出す覚悟は持っているはずです。
下記の個人の所得税率をご覧ください。
ザックリとした話になりますが、年収1000万円と2000万円では税率が10ポイントも異なります。法人の実効税率は約30%ですから、個人の住民税や社会保険まで考慮すると、役員報酬として会社から1000万円多く移した時点で約30%以上の現金が余計に失われる計算になります。
従って、役員報酬として2000万円出した時点で、現金の総量は減っているため補てんするハードルは高くっているのです。
起業して高い役員報酬で優雅な暮らしをしたいと考えている経営者にとっては、水を差すような話かもしれません。しかし、何も役員報酬を1000万円以上、取ってはいけないという話ではないので、ご安心ください。
『役員報酬で優雅な暮らし』が実現できるのは会社があってこそ。そう考えれば、まずは役員報酬よりも「会社を大きくする」「会社を強くする」ことを最優先にすべきではないでしょうか。もちろん、その過程で得られる恩恵はたくさんあります。それは頼れる税理士を味方につけることができれば特に難しい話ではありません。
会社に多くのお金を残してくれる税理士を見つける方法は簡単ではありませんが、目の前にいる税理士が「税金の計算を主としているのか?」を役員報酬を大税にして見分ける方法があります。
それは役員報酬の相談をする際に、以下の3つのうち最低でも2つの話題に触れてこない税理士に期待するのは難しいと考えてよいでしょう。
1.事業の見通し(課題)と打開策
2.金融機関対策の改善方法
3.利益・資金繰り計画
この3点を無視して、会社を永続させる役員報酬の提案はできません。その理屈は、ここまでご覧頂いた今ならご理解いただけるのではないでしょうか。
もちろん役員報酬を抑えたからといって、会社が必ずしも成長する・倒産しないというわけではありません。しかし、会社・社長にお金がなく、金融機関からの信用がない状態では、急激に売上が下がった時に生き残ることはできないのです。
銀行でさえ知りえない会社のリアルな懐事情を把握できる特殊な職業である税理士。そんな税理士に、税金の計算だけをさせるのは非常に勿体ない話です。中小企業だからこその税理士活用法を弊社では提案していますので、ぜひ、ご相談ください。